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 何だかいい匂いがする。腹の虫がぐう、と鳴いた。目をうっすら開くと、視界に飛び込んできたのはオレンジ色の電球だった。セシルは首を動かし、周囲を見渡した。
「ああ……目が覚めたのか」
 男の声がする。聞いたことのない声色だった。
「もう起きて大丈夫なのか?」
 声の主がセシルの顔を覗き込んだ。セシルは小さく頷き、上半身をゆっくり起こした。
「……ここは……」
「俺の家だ。正確には俺ともう1人の家だが」
「君は……誰?」
「おいお前、名前を聞く時は自分から名乗れって教わらなかったのか?」
「ごめん、何のことか分からない……」
「……まあいい。俺の名前はカイン・ハイウィンド。で、お前の名前は」
「セシル。セシル・ハーヴィ」
「セシルか。お前、何であんな格好……」
「え……?」
「すまん、何でもない。体の方は平気か」
「ああ。ねえ、もしかして君が助けてくれたの?」
「まあな。気配を感じて外に出てみたら、お前が倒れてたからびっくりした」
 あんな状態で、と言いかけた言葉を飲み込み、カインはまじまじとセシルの顔を見つめた。
 正直、体さえ見なければ女だと勘違いしていた所だった。家に運び、汚れは一通り落としてやったが、体中についた痣や、手首の擦り切れたような真っ赤な跡は消えていない。どういう目に遭ったのかは聞かなくても見れば分かる。ただでさえこの周辺は若い女が少ない地域だ、こんな男か女か区別のつかないような面構えじゃ、飢えた狼達の餌食にされてもおかしくはない。
 かくいう自分も変態に襲われかけた経験があるので、セシルの不遇にカインは心から同情した。
「お前、腹減ってるんだろ。もう1人の奴が作ったシチューがあるから食べていけよ」
「シチューって何……?でも、いい匂いがする」
「お前、知らないのか」
 カインはベッドサイドから、キッチンに移動した。鍋を火にかけながら、シチューを知らない人間がいたことに内心驚いていた。もしかしたらセシルはこの国の人間ではないのだろうか。先ほども自分の言葉をいまいち理解していないようだったし、国を移って間もないのかもしれない。来て早々、酷い目に遭ったのかと思うと、尚更哀れに感じた。
 温まったシチューを器に盛り、テーブルの前に座ったセシルにスプーンを差し出す。手渡されたそれを見つめ、彼は明らかに戸惑っていた。カインが怪訝そうにセシルを見やる。目が合うと、首を傾げて尋ねてきた。
「カイン。これはどうやって使うんだい?」
「おいおい、お前の国にスプーンはないのか」
「スプーンは知ってる。だけど僕、一度も自分で料理を食べたことがなくて……」
 それを聞いて脱力し、カインは額に手をあてがった。
 まさか、このどうにも調子の狂う美少年は、どこぞの王子様か何かだろうか。自分でものを食べたことがない生活なんて想像がつかなかった。まだ幼かった頃、風邪をひいた時に、母親から果物を食べさせてもらった記憶しかない。
 王子様かもしれない相手に“つべこべ言わず自分で食べろ”などと言って、後に処刑でもされたら堪ったもんじゃない。それにしても、王子を陵辱したなんてバレたら火あぶりどころじゃ済まないだろうなと頭の隅で思いながら、カインはスプーンをセシルから取り上げ、シチューを掬った。
「口開けろ。食べさせてやればいいんだろ」
「えっ……ああ、ありがとう……?」
 セシルの小さな口にスプーンを突っ込む。咀嚼し、飲み込んだセシルは美味しいと言って微笑んだ。もう一度スプーンでシチューの具を掬うと、それに合わせてセシルは口を小さく開いた。
 桜色の唇と唇の隙間から赤い舌先が垣間見え、妙な気分にさせられる。なる程な、とカインは納得した。セシルには、性的な魔力のようなものが感じられる。それが生まれつきなのか、それとも何者かによって開発されたものなのかは分からないが。恐らくは前者だろうなとカインは思った。金持ちの王子様が、後者のような環境に置かれることはまず以てないからだ。
 シチューを半分ほど食べたところで、セシルが急に口元を押さえた。吐き気を催したのかとカインが背中をさすってやると、荒かった息が段々大人しくなっていく。
「ごめん……もう、食べられない」
「構わんさ。それより風呂に入ってこいよ。すっきりするぜ」
「ありがとう。御礼はあとでするから、待ってて」
「ん?あ、ああ」
 御礼って何だろうと思いながら、カインは頷き、バスルームに向かうセシルを見送った。
 半時間ほど経った時、先ほどまで聞こえていたシャワーの音が止まった。もうすぐ上がってくるだろうと予測し、カインは読んでいた小説の間に栞を差し込み本を閉じた。椅子から立ち上がった所でがちゃりとドアの開く音がしたので、背後にくるりと振り返る。カインは目を丸くした。
「セシル、服はどうした。渡しただろ」
 おざなりにバスタオルで体を隠したセシルが石鹸の匂いを纏い部屋の中に入ってきた。どうしてそんな質問をするのだと言わんばかりにセシルが不思議そうな顔を作る。
「君は恩人だから、御礼をしなくちゃいけないだろ」
「だから、御礼って何の話だよ」
 金貨でも貰えるのかと考えを巡らすうちに、セシルが側に近寄ってきた。バスタオルを床に落とし、カインの体に抱き付くと、そのまま床に押し倒す。頭が真っ白になった。
「……セシル、お前」
「皇帝はいつも言ってた。恩人に礼を返すのは当然だって……皇帝は僕を生かして下さった恩人だから、ご奉仕することで恩返ししてきたんだ……それなのに……」
 セシルは1人ごちながら、カインの着ていたシャツのボタンを器用に外していく。暫くの間されるがまま呆然としていたが、乳首を吸われた瞬間我に返った。セシルの体を引き剥がし、一体どういうつもりなのだと問いつめる。
「カインはセックスが嫌いなのか?」
「そういう訳じゃないが……おかしいだろ」
「いいじゃないか、御礼させてよ。僕、これ位しか恩返しの方法知らないから」
 セシルがどこかの国の王子様だって――。自分はとんだ勘違いをしていたようだ。
 皇帝とは我が国の暴君のことだろう。セシルは恐らく、王宮で男娼をさせられていたのだ。どうやら皇帝は見た目通りの悪趣味な奴らしい。一度だけ遠目に奴を見たことがあるが、人を人とも思わない冷酷な光を宿した鋭い瞳が印象に残っている。
「セシル、とりあえず服を着ろ……話をしよう」
「難しいことは苦手だな。それより絶対に気持ちよくするから、お願いだから恩返しさせてくれよ」
 ねえ、とセシルに懇願され、カインは動けずにいた。首筋を優しく撫でられ、慣れた手つきで下半身をさすられる。セシルの触れた場所に体中の熱が集まるのをカインは感じた。
 適当な女と関係を持ったことはあったが、もちろん同性との経験などない。男同士のセックスに対する単純な好奇心と、セシル本人に対する性的な欲求がない交ぜになってカインの決意を後押しした。皇帝に仕込まれた手練手管というのは気に食わないが、誘いに乗るのも悪くないのかもしれない。そもそも、自分が誘った訳じゃない。セシルが俺を誘ったのだ。そう自分に言い聞かせ、カインはおもむろにセシルの背中に手を滑り込ませていった。
「あっ……」
 背中から脇腹にかけて指を這わすと、セシルが肩を震わせる。乳首を指の腹でつつくと、充血したそれはぷっくりと立ち上がった。女のように敏感な肉体に驚いた。自分が同じことをされても、こんな反応にはならない筈だ。男娼をやっていたのだから当然なのかもしれないが、男を悦ばせるあらゆる術を、セシルは無意識のうちに理解しているような気がした。
 フローリングの床の上では固すぎるためベッドに場所を移動した。カインがベッドに腰掛けると、セシルがすかさず彼の足下に座り込んだ。
「セシル?」
「カイン、足開いて」
 セシルの意図を察したカインは体中が熱くなった。段々心臓の鼓動が早くなる。両脚を大きく開くと、セシルはその間に体を割り入れてきた。あっという間に衣服を脱がされ、勃ちあがりつつあるペニスを白い両手に包み込まれる。
「っ……!」
 自分で触ることはあっても、誰かに触られた経験は初めてだった。ましてや、それを舐められたり、誰かの口に入れたことなどない。何の躊躇もなくセシルがペニスを口に含んだ瞬間、カインは達しそうになった。他人の口の粘膜に包まれることが、こんなにも気持ち良いとは思わなかった。
 セシルが髪の毛を耳にかきあげ、頭を上下に動かし始めた。自分のそれが、セシルの桜色に彩られた小さな口を頻繁に出入りする光景はたまらなかった。次第にカインは自ら快感を拾うことに夢中になり、セシルの頭を掴んで好きなように揺さぶった。絶頂が近付くにつれ、動きの激しさが増していく。出る、そう思った瞬間、カインはセシルの口から自分自身を引き抜いた。勢い良く飛び出した白濁が、セシルの口元から首にかけて付着する。
「すまん……」
「いいよ。でも、どうせなら口の中に出してくれたら良かったのに」
 口の周りについた精液を指に取り、セシルはそれをペロリと舐めた。カインは唾を呑み込んだ。頭がくらくらする。セシルの言動一つ一つが、自分を惑わせるのだ。
「……お前、嫌じゃないのか?」
「君は恩人だから。……あの人達とは、嫌だったな」
 あの人達とは恐らくセシルに多数の痣をつけた張本人達のことだ。恩人かどうかが基準なら、仮にそいつらにも何らかの恩があったのなら、セシルは喜んで足を開き、抱かれるのだろうか。
「カイン?どうしたの?」
「いや……何でもない」
 セシルの体を抱き寄せ、首筋や肩に吸い付く。骨ばった体なのに、どうしてこんなにも抱き心地が良いのだろう。カインはセシルを抱き締め、共にベッドに倒れ込んだ。顔中にキスの雨を降らし、桜色の唇を貪る。舌を差し入れると、セシルは積極的に絡めてきた。互いの唾液が混ざり、やがて溶け合う。キス一つにここまで夢中になったのは初めてだ。時折聞こえるセシルの擽るような吐息が一層カインの情欲に火をつけた。
 乳首を甘噛みし、ちゅっと音を立てて吸い上げる。セシルが髪を振り乱し、甲高い声で鳴いた。脇腹や臍を舐め回し、彼の零す甘い吐息を聞きながら、足を高く上げさせ双尻を左右に引っ張る。丸見えになったやや赤く腫れたそこに舌を這わせた。こんな場所を舐めるなんて、他の奴が相手だったら絶対にしたくない。舌を動かす度にセシルの喘ぎ声が部屋中に響き渡り、カインは殊更動きを早めた。
「あっ、はああっ……あ、カイン……んっ、もう……いっ……」
 セシルの言葉を合図に、カインは顔を臀部から離した。先ほどの口淫により達したばかりのペニスは、すでに痛い程に勃起していた。竿を持ちセシルの蕾に先をあてがう。ぐっと腰に力を込めて、ゆっくりと自身を体内に侵入させた。
「んんんっ!」
「っ……セシルッ……」
 セシルの名を呼び、汗ばんだ額に口付ける。奥まで挿入を果たしたカインは腰を引き、律動を開始した。セシルの体に覆い被さり、体全体で彼の肌の感触を堪能する。古びたベッドのスプリングがギシギシ音を立てるのも気にせず激しく揺さぶり、より多くの快感を得ようと躍起になった。やがて再び絶頂を迎え、カインはセシルと舌先を絡めながら、内部に精を吐き出した。暫くの間繋がったまま抱き合っていた体を離し、そっと引き抜く。出したばかりの白濁がやや緩んだ穴から零れ出し、セシルの腰がびくりと揺れた。
 心地良い倦怠感に包まれ、カインはセシルを抱き起こすと、胡座をかいた自分の上に足を開いて跨がせた。目の前にある充血した乳首を吸い、舌で転がす。愛撫に耐えきれなくなったセシルはカインの頭をぎゅっと抱き締め、切なげに声を漏らした。
「あ……はあっ……う、んっ……」
 セシルの声に、カインは完全に酔いしれていた。だから、玄関から響く物音など、聞こえる余地は微塵もなかった。
「カインー?起きてるのか?」
 何も知らない同居人の声と共に、寝室のドアがノックされる。カインが我に返った時、扉は開かれ、同居人のフリオニールが姿を見せた。
「フリオニール……お前、何で……」
 今日は帰れそうもないと言って今朝家を出たフリオニールに、カインは非難の目を向けた。我ながら自分勝手だとは分かっているが、突然の帰宅によってセシルとの情事を邪魔され、多少なりとも不快感を感じずにはいられない。
 フリオニールは顔を真っ赤にしてその場に立ちすくんでいた。口を魚のように開け閉めし、声にならない声を出す。無理もない、とカインは思った。これが逆の立場なら、同じように驚愕したに違いない。
 セシルは一瞬フリオニールの方を振り向き、そしてカインの髪を撫でながら、首を傾げて彼に尋ねた。
「……もしかして、あの美味しいシチューを作ってくれた人?」
 カインがああ、と頷くと、セシルは顔を綻ばせた。ベッドから降り、近くのシーツで体をくるむとフリオニールの目の前まで駆け寄った。哀れなほど体を固くし、耳まで真っ赤にした同居人とセシルの姿を交互に見やり、カインは軽いため息をつく。恩人、か――。
 セシルの次の行動が、手に取るように予測できた。そして、やはりその通りになった。
「フリオニール、っていうんだね。僕はセシル。あの……君の作ったシチューを頂いたんだ、すごく美味しかった。ありがとう」
「えっ……と……あの……はい……どうも……」
「君にも、ぜひ御礼がしたいんだ……。僕なんかで良かったら、だけど」
「……?」
 フリオニールの困惑した表情を見て、カインは横から口を挟んだ。同居人に男との情事を目撃されたという事実が、もうどうにでもなれと、カインを半ば自暴自棄にさせていた。
「フリオニール。お前も混ざれよ」
「は?」
「セシルはお前ともしたいんだと」
「……あの、何を?」
 バカ正直に聞いてくるフリオニールにカインは心の中で嘆息し、間を置いてから返答する。
「だから……セックスに決まってるだろ」
 カインの発したストレートな単語を聞いて、フリオニールはますます顔を赤らめた。
「な、な、な、何言って……」
「嫌なら参加しなくていい。セシルこっちに来い、続きをやろうぜ」
 セシルが頷き、フリオニールの手をそっと引く。彼は意外にも、素直にセシルの後ろを着いて来た。まあ、これもまた仕方ない――。カインは肩をすくめ、棒立ちするフリオニールの顔を見やった。
 セシルがフリオニールの前に膝立ちし、彼の纏っていた衣類を次々と脱がせ始める。中から取り出したペニスを持ち上げ、手のひらで包み込み、上下に軽くしごいてやった。逃げ腰になるフリオニールのやや勃ちあがったそれを口にくわえると、彼は低い声で呻いた。
「あのっ……ちょ、待っ……あっ……」
「……ひもひ、ほふはい?」
 気持ち、よくない?と、口にくわえたまま上目遣いで喋るセシル。敏感な部分に熱い息が吹きかかり、あまりに直接的過ぎる強い刺激にフリオニールは頭の中が真っ白になった。訳も分からないまま達してしまい、口の中に絶頂の証を放つ。セシルが精液を更に吸い出すように口をすぼめると、いよいよ立っていられなくなった。
 セシルは床に座り込んだフリオニールの股間に顔をうずめ、先端から袋までを丁寧に舐めていく。2人の様子を暫し眺めていたカインはサイドテーブルのコップの水をぐいと飲み干し、懸命にフリオニールのものを奉仕するセシルの腰を後ろから抱え上げた。両脚を軽く開かせ、指で広げたそこに一気に挿入する。
「んああっ」
 セシルの体がびくりと跳ねた。唾液と精液で濡れた舌でペニスを必死に舐めながら、両手をフリオニールの腰に回してしがみつく。カインに何度も乱暴に突き立てられ、その度に快楽の波が押し寄せ、セシルは甘い声をひっきりなしに漏らしていた。
 至近距離で2人が交わる様を目の当たりにしたフリオニールはごくっ……と唾を呑み込んだ。麻痺寸前の頭の片隅では冷静な自分もいて、一体この状況は何なのだと必死に思考を巡らしている。仕事が思ったより早く片付き、夜中に帰宅してみたら、親友であり同居人のカインが見ず知らずの見目麗しい美少女……と思いきや男と裸で抱き合っていて、更に気付けば自分までもがこの美少年に誘われるまま、こうして淫らな行為に興じている。
 もしかしたら、これは全て夢なのかもしれない。でなければ、こんな非現実的な状況が存在する筈がない。そう思うと、途端に大胆な気分になれた。先ほどまで一方的にされるがままだったのが、戸惑いながらもセシルの頭を撫で、肩や背中に手のひらを這わせ始める。
「ん……ううんっ……ああっ……!」
 カインの律動が激しくなり、セシルの声も荒くなる。数回素早く腰を打ちつけ、そのまま動きを止めたカインを見て、達したのだと判った。ペニスを引き抜かれたセシルはフリオニールにしがみついたままぐったりと床に倒れ込んだ。しかし程なくして体を起こし、膝の上によじ登ると、フリオニールの耳元で熱っぽく囁いた。
「……君の、入れていい?」
 かっと体中が熱くなる。フリオニールが無言のまま頷くと、セシルは彼に跨り両脚を大きく開いた。おもむろにペニスを掴み、自分が受け入れるそこに先端を持っていく。浮かしていた腰を落とし体重をかけると、すんなりと中に入った。セシルはフリオニールの肩口に顔をうずめ、自ら腰を振り出した。
「んんっ……ね……どう……?きもちいい……?」
 耳たぶを甘噛みしながら尋ねてくる。先ほどから薄々気付いていたことだったが、恐らくセシルは自分が初体験だと感づいている。フリオニールは返事をする代わりにセシルの体を抱き締めた。
 時間を置かず3回も達した脱力感から、カインはベッドに座り2人のセックスを眺めていた。フリオニールが童貞だったのを知っているだけに、初めての相手がこんなに手慣れた元男娼じゃこの先が大変だなと、色気のないことを考える。
 セシルは自ら腰を動かしながらフリオニールの首筋にキスを落とし、細長い指で彼の乳首を弄っていた。あれじゃあどっちが上か分からんなと苦笑いし、結合部に視線を落とすと、再び欲が首をもたげ始めた。ベッドから降り、セシルの腰に手をかける。
「セシル、こっち向けよ」
 言いしな体を持ち上げ、フリオニールの先端が入ったままセシルの体を180度回転させた。
「あっ……」
 カインはセシルの両足首を左右に持ち上げ自分の肩に乗せてやり、フリオニールのものが入ったそこに人差し指を強引に割り込ませた。セシルは髪を振り乱した。
「ああっ!や、あ、はああっ」
 続けて中指も挿入させる。二本の指をゆっくりと出し入れすると、セシルは涙を流し、狂ったように乱れ始めた。
「カイ……ン……それ、やめっ……」
「フリオニール、まだいくなよ。俺の指にお前のがつくのは御免だ」
 フリオニールの抗議を無視し、カインはセシルを更に快楽の淵に追い立てた。指は変わらずぐちゅぐちゅと音を立てながら動かしつつ、セシルのものをくわえ、舌先で舐めまわす。肩に置かれた彼の足がびくびくと揺れ、一層大きな声で喘いだ。
「うあああっ!あっ、んん、はあああっ!」
 フリオニールに凭れかかり、セシルは体を震わせ、軽い痙攣を繰り返しながら絶頂に達した。生理的な涙をとめどなく流し、視点の合わない瞳は虚空をさまよっている。カインは口の中の白濁を床に吐き出し、二本の指を引き抜くと、セシルの半開きの口に押し込んだ。おずおずとそれを舐め始めた彼を見下ろし、いっそ何本まで入るのか試してみたいと淫猥な妄想にしばし耽る。そのうち、フリオニールが達したらしく、腰を浮かせたセシルの太ももには幾筋もの精液が流れ出てきた。
 何回抱いても飽き足らない。魔性に取り憑かれたように、カインとフリオニールは交代でセシルの体を貪った。セシルもまた積極的に彼らに抱かれた。その日、夜が明けるまで、三人の狂宴は続いた。


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